Julia 〜ユリヤガイ属〜
沖縄には数種のユリヤガイ類が生息している。Julia japonica, J. zebra, J. mishimaensis, それにJulia sp. [Satoh]である。 私が卒業研究で扱ったのがJulia sp. [Satoh]である。私の卒業研究の指導教官であった故弥益照文先生によると「これは未記載種なので、発見者の佐藤唯史さんにちなんで仮にSatohと呼んでいる」ということだった。 佐藤さんは弥益研でユリヤガイの研究を行った方で、確か修士までとられたと聞いている。
弥益先生から聞いた情報
<タマノミドリガイ情報>
<他の近縁群の情報>
◆フリソデミドリガイ:殻が片側しかない。ヨレヅタを食べる。◆Oxynoe:ヨレヅタとセンナリヅタから見付かる。港川(沖縄本島)のセンナリヅタに多い。
<見島>
◆港の側の部落に宿がある。宇津という部落で、山を越えて1時間ほど歩かないと行けない。河野健一さん:雑貨屋で宿にもなる。 ◆Julia mishimaensis のtype locality (漁協の目の前)は埋め立てられてしまった。しかし、堤防の向こう側にはJ. mishimaensis がいる(平成6年に弥益先生が確認している)。 ◆アミモヨウを採って振るうと見付かる。本来はイワヅタにいるのだが、アミモヨウに散歩に来ているらしい。
<角島>
◆角島にもJ. mishimaensis がいる。 ◆特牛(こっとい)から出る船で渡れる。 ◆キャンプ場(島に2つあるが、西側の灯台がある方)の沖に(潮が引くと出てくる)岩棚がある。そこの岩は脆く簡単に剥がれるが、それを振るうと、J. mishimaensis とJ. zebra が採れる。
<Julia japonica について>
◆千葉で本種の殻が見付かる。 ◆高知の足摺岬の竜串の沖の岩に密生するヒメイワヅタにいる。 ◆島後(島根大学臨海実験所)にもJ. japonica とT. limax がいる。松野先生が以前に見つけている。実験所の大津浩三先生が世話をしてくれるはず。
<Tamanovalva limax について>
◆玉野の近くの下烏島の北宦官にフサイワヅタが必ず生えている場所があり、そこにT. limax がいる。 ◆竪場島(たてばじま)の西側の出っ張った場所にもフサイワヅタが生えていてT. limax がいる。 ◆下烏島も竪場島も潜らないと採集できない。冬でも採れる。 ◆玉野の出先海水浴場の先端に岩場があり、そこにフサイワヅタがいる。春先ー夏にかけてT. limax が採れる。 ◆香川の室木島(もろきじま)で行われていた実習で最初にT. limax が採集された。 ◆牛窓臨海の前島でもT. limaxが採れるらしい。牛堂(ごどう)さん(技官)が前島まで連れて行ってくれる。 ◆瀬戸大橋から降りられる島々でも見つけられるはず。 ◆イワヅタは潮が引いた時に歩いて採れる。潮の流れが良い岩場にいる。多い時はじゅうたんのように多い。 ◆<殻が見付かった場所>(J. japonica の話だったと思う) 千葉、紀州、高知の竜串、角島、見島、 ◆奄美のかげろま島の東側の海岸(安脚場(あんぎゃば)から歩いて東に出る)でも見付かっている。生貝は採れなかったが、当時はヒメイワヅタに付いているとは知らなかったからだろうとのこと。 ◆奄美大島の東側(笠利(かさり)町、「あやまる荘」という国民宿舎の前の海岸:あやまる岬)のリーフエッジで2匹採れた。もう少し先に行ったところにある「用(よう)」という集落も良いフィールドだ。 ◆総じて、Julia は大平洋側、日本海側にしかいない。瀬戸内海にはいない。 ◆本土でJulia の生貝が採れたのは見島と角島だけ。 ◆宮古や八重山ではJuliaを探したことがないが、恐らく見付かるだろう。 ◆ハワイでKay がアミモヨウ(海藻)からJulia が採集されたと報告していたので、見島でもアミモヨウを集めてみたところ、J. japonicaが多く採れた。しかし、Julia はアミモヨウを食べはしない。 ◆初めてイワヅタからJulia (J. mishiimaensis & J. zebra)を採集したのは角島だった。
文献
- Kawaguti, S. (1959)Formation of the bivalve shell in a gastropod, Tamanovalva limax. Proc. Japan Acad., 35, 698-611.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1959) A bi-valved sacoglossan gastropod, Tamanovalva limax. Zool. Mag. 68, 442-446.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1960) Electron microscopic study on the adductor muscle of a bivalved gastropod, Tamanovalva limax. Biol. Jour. Okayama Univ., 6, 61-70.
- Cox, . L. R. and Rees, W. J. (1960) A bivalve dgastropod. Nature, 185 (4715) (Tamanovalva-Edenttellina-Ludovicia)
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1960) Spawning habits of a bivalved gastropod, Tamanovalva limax. Biol. Jour. Okayama Univ., 6, 133-150.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1960) Formation of the adductor muscle in a bivalved gastropod, Tamanovalva limax. Biol. Jour. Okayama Univ., 6, 151-159.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1961) The shell structures of the bivalved gastropod with a note on the mantle. Biol. Jour. Okayama Univ., 7, 1-16.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1961) Self-fertilization in the bivalved gastropod with special reference to the reproductive organs., Biol. Jour. Okayama Univ., 7, 213-224.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1962) Julia japonica found living as a bivalved gastropod. Proc. Japan Acad., 38, 284-287.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1963) Embryonic development and metamorphosis in the bivalved gastropod. Proc. 16 Intern. Cong. Zool. Washington. D. C., 102.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1966) Feeding and spawning habits of a bivalved gastropod, Julia japonica. Biol. Jour. Okayama Univ., 12, 1-9.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1966) Development of the nervous system in a bivalved gastropod. Biol. Jour. Okayama Univ., 12, 61-67.
- Kawaguti, S. and Yamasu, T. (1967) Development of the alimentary canal in a bivalved gastropod. Biol. Jour. Okayama Univ., 13, 85-95.
- Yamasu, T. (1968) Anatomy and histology of a bivalved gastropod, Julia japonica. Biol. Jour. Okayama Univ., 14, 35-53.
- Yamasu, T. (1969) On the development of the bivalved gastropod, Tamanovalva limax. Biol. Jour. Okayama Univ., 15, 37-71.