出現レコードの共同マネジメント

生物の出現レコードに何らかの同定情報を付与し、共同作業が可能なプラットフォームで公開したする。そのレコードに何らかのバウチャーを残すことで、その同定情報は他人からも更新され得る。もちろん、複数の人から書き換えられたことで、その同定情報に新旧の様々なバージョンができてしまう。そしてこのとき、新しいものが“正しい”とは限らない。

 

また、レコードのマネジメントをしていくときに、決して同定情報だけがその更新の対象ではないだろう。位置情報に修正があるかもしれないし、地名のスペルミスが修正されるかもしれない。重要な修正から軽微な修正まで、レコードのバージョンは複雑な構造を成して増えていくだろう。

 

このように、レコードをオープンにして書き換えられるようにした時に、レコードの変更履歴をどうマネジメントすればいいだろうか。書き換えた人の貢献の蓄積をどう表現すればいいだろうか。Open Taxonomyを謳うなら、これは本質的な課題である。

 

私は、何らかの書き換えがあった時には、それを別の(つまり独自のIDを持つ)レコードとして保存されるようにしてはどうかと思っている。同定情報の修正であろうが、位置情報の修正であろうが、新しい出現レコードにしてしまう

 

こうすると、同一の出現を示すレコードが重複して存在してしまうので問題だという指摘があるだろう。しかし、更新の元になったレコードを常に紐づけておくようにさえすれば、レコードの同一性も修正の相関図(変遷)も後からでも分かる。レコードの新旧や内容の妥当性は、必要な時にずらっと並べて比較検討すればいい。どのレコードを使うのかはデータ利用者がよかれと思うルールで選べばいい。

 

この方法では、データをつくる(登録、更新する)側にできるだけ自由に簡単に作業に参加できるようになること、かつその貢献を一つのレコードという単位で把握できるようになることがメリットである。これは貢献のインセンティヴを考えた仕組みなのである。また、唯一の“正しいレコード”を作ることを目指さない方法でもあり、その代わりにそのデータを利用する側にクオリティチェックも含めた判断を任せてしまうという考え方に立つのが特徴である。