難しくて意義深い統合

生物多様性情報学を成功に導くためにやらないといけないことは、例えばGBIFとDNAデータバンクの統合ではないだろうか。この2者が全てではないが、議論のきっかけとしては悪くないと思う。扱っているデータの構造的な違いがあるはずだから、それは単純にほいほいとできることではないだろう。しかし、その統合のために何を解きほぐして、どのような形に落とし込めばいいのかということを考えることこそが本質的な作業になると思う。

 

誤解を恐れずに言うなら(きっと誤解されるが)、その統合に一番近いことをやっているのがDNA Barcordingだと私は感じる。しかし、そもそもDNA Barcordingとはいったい何なのか(その意義)について研究者間でコンセンサスがないので、この話は簡単には通じないだろう(と私はつい身構えてしまう)。DNA Barcordingは最初は生物同定ツールとして計画されたのだろうが、『同定』はそれほど単純な課題ではない。でも、その目的はどんどん変わっていけばいいと個人的には思うし、そんなことよりもとにかくどんどんレコードを蓄積していけばいい。私はその可能性をとても大きく評価している。

 

DNA Barcording関連の議論で次のようなことを聞くことがある。

「専門家によって正確に同定された標本からDNAを抽出することが必要」

これには私は同意できない。専門家の同定はあった方がより良いが、本質的なことではない。専門家によってなされた同定が長期的に”正しい”状態でいられるとは限らない(そもそも正しい同定なんてないというのが私の主張だが)。こういった点から、私は必ずしもDNA Barcordingに関わっている方々と同じ意味でDNA Barcordingの可能性を評価しているわけではないのかもしれないが、とにもかくにも気にせずデータを集めることは意味があると思う。 Reverse Identificationもできることだし。