地球上の生物多様性の全容がどのようなものなのか、詳しいことは誰もまだ知らないが、そのイメージは人によってかなり違うだろう。では、生物多様性に関わる研究者がもつイメージは一般の方々と何が違うのかと考えてみた。これには3つほどあると思う。
1つ目には、日常生活で知り得るよりもはるかに多様な分類群が存在するということ。
2つ目には、これまでに知られている種が全体の数パーセントに過ぎないだろうということ。
3つ目には、種の内部にも遺伝的な多様性があるために多様性が種レベルで捉える以上に細かく、そして複雑であるということ。
とりあえずはこれが教科書的な答えとなるだろうか。
しかし、ここで「種」という言葉を使うこと自体に私は抵抗があるわけである。それこそが今、専門家が直面している生物多様性の実体に対するもっとも生々しいイメージなのではないだろうか。
生物多様性とは、歴史的な関係性を持ちながらも、明確な集合単位を持たない多様な生物体の複雑な関係性の総体のようなものであろう。