有輪動物門 Phylum Cycliophora

分類

Phylum Cycliophora Funch & Kristensen, 1995 有輪動物門

 Class Eucycliophora Funch & Kristensen, 1995 真有輪綱

  Order Symbiida Funch & Kristensen, 1995 シンビオン目

   Family Symbiidae Funch & Kristensen, 1995 シンビオン科

    Geus Symbion Funch & Kristensen, 1995 シンビオン属

     Symbion pandora Funch & Kristensen, 1995

     Symbion americanus Obst, Funch & Kristensen, 2006


有輪動物に関する重要な報告

  • Neves, R. C., Bailly, X., & Reichert, H. (2014). Are copepods secondary hosts of Cycliophora?. Organisms Diversity & Evolution, 14(4), 363-367.

有輪動物が付着したソコミジンコ類を2個体見つけたことを報告。これは、ヨーロッパ産のアカザエビHamarus gammarus の1個体の口器(多数のSymbion sp.が付着)を観察中に採れたもので、同じ種のアカザエビから見つかっている未記載の有輪動物と同種と思われる。1個体目のソコミジンコに付着していたのは2個体の有輪動物で、どちらも無性摂食世代であり、保育嚢には発生中の幼生は無かった。再生中のbuccal funnelも無かったが、少なくとも1個体には3つの口器再生の痕(wrinkles)が見られたことから、ソコミジンコに固着した後に口器再生を繰り返していた(つまりそれなりの長い期間そこに棲んでいた)ことが分かる。2個体目のソコミジンコに付着していたのは1個体の有輪動物であり、付着部の形状から遊泳性のステージの個体が付着した後のものであることが分かるが、buccal funnelを持たないこと、卵を保有していないことから、パンドラ幼生、もしくは雌が付着したものではないことが分かる。プロメテウス幼生でもないようで、そのためにSymbion sp.の生活史の中で、新規の付着段階であることが示唆されるという(!)。考察を読むと、今回のホストとなっているソコミジンコが泥の中に棲むタイプなのか、アカザエビの口器をウロウロとしていたものなのかも分からないようだ。有輪動物 にとって、前者の場合は懸濁物を採るには不利であり、後者であればアカザエビ口器に固着して移動できない個体よりも融通が効いて有利であると考察されている。ソコミジンコに付着することが分散に役立っているのかが興味深い点である。

 

  •  Funch, P., Thor, P., & Obst, M. (2008). Symbiotic relations and feeding biology of Symbion pandora (Cycliophora) and Triticella flava (Bryozoa). Vie et milieu, 58(2), 185.

Symbion pandoraは藻類を与えても摂餌を開始しない。イガイ類をすり潰したもの等を与えると即座に摂餌を開始する。これは有輪動物 がなぜアカザエビの口器にしか生息しないのかという理由を示唆する。つまり、有輪動物はアカザエビの摂餌の際の食べこぼしを食べていることがうかがえる。

 

  • Obst, M., Funch, P., & Kristensen, R. M. (2006). A new species of Cycliophora from the mouthparts of the American lobster, Homarus americanus (Nephropidae, Decapoda). Organisms Diversity & Evolution, 6(2), 83-97.

米国産のアカザエビ科の1種(Homarus americanus)から2種目の有輪動物である Symbion americanus が記載された。ただし、分子情報から隠蔽種(つまりS. pandora でも S. americanus でもない第3の種)の存在も指摘されている(Obst et al. 2005; Baker and Giribet 2007; Baker et al. 2007)。

 

  • Obst, M., & Funch, P. (2003). Dwarf male of Symbion pandora (Cycliophora). Journal of Morphology, 255(3), 261-278.

Symbion pandoraの更なる観察から、雄について生活段階や呼び名を整理した。1995年のS. pandora 記載時には、無性摂食世代からの内部出芽で直接に雄が生じると考えられていた。その後、雄にはprimary male, secondary maleという2段階があるとされた。Obust & Funch (2003)は、primary maleには雄の生殖器官が発達していないことから、これをプロメテウス幼生(Prometheus larva)と名付け、雄でないことを明確にした。そして、secondary maleと言われていたものが雄であるとした。これは、プロメテウス幼生が無性摂食世代個体に付着した後に内部出芽で現れる(通常2個体)。この雄は遊泳性があり、やがて泳ぎ出る。

 

本種の生活史には5種の自由遊泳性の段階がある。パンドラ幼生/プロメテウス幼生/脊索幼生という3段階の幼生、および矮小雄(dwarf male)と雌である。パンドラ幼生/脊索幼生は無性摂食世代の肛門から放出される。プロメテウス幼生の放出は観察されていないが、母体内で体の後端を母体の肛門近くに向けている点が類似しているので、同様に放出されると推察されている。

プロメテウス幼生は無性摂食世代の肛門の近くに付く傾向があり、複数個体(最大で7個体)も付くことがある。他の幼生が宿主の口器に付くのに対して、プロメテウス幼生のみが同種の無性生殖世代に付く。プロメテウス幼生の細胞の大半は分解され、代わりに内部に2つの芽体が発達する。それが矮小雄になる。

 

  • Funch & Kritensen (1997)

欧州産のアカザエビ科の1種 Homarus gammarus の口器に棲む未記載種の存在が示された。

 

  • Funch, P., & Kristensen, R. M. (1995). Cycliophora is a new phylum with affinities to Entoprocta and Ectoprocta. Nature, 378(6558), 711.

ノルウェー産のアカザエビ科の1種のNephrops norvegicus(ヨーロッパアカザエビ)の口器に棲むSymbion pandora が記載された。同時に有輪動物門が設立された。