内肛動物あれこれ情報

内肛動物に関する情報でメモしておきたいことがあれば、少しずつ残しておきます。

どこに棲んでいるか

単体種は共生性の種が多く、多毛類、カイメン、コケムシ、ホシムシ、ホヤなどに付着している。ただし、単体性でも共生性でない種も少なくない。

群体種は非共生性であり、海藻、岩などに非特異的に付く(ただし、Loxokalypus属だけは多毛類に付く)。

内肛動物の動き

内肛動物はともてよく動く動物である。

単体種は移動方法も独特のものがある。

でんぐり返りする種(Loxosoma agile)、尺取り運動をする種(Loxosoma monilisなど)が知られる。

群体種は移動こそできないが、体(柄部)を曲げたり、倒したり、活発に動く。

芽体が成長すると母体から離れる。この時、しばらく泳ぐ種が多いが、やがて地面に降りて這って移動する。

内肛動物を食べる生物

どのような生物が内肛動物を食べているのか、情報はとても少ない。

 

Behrens, D. W. (2005). Nudibranch behavior. New World Publications Incorporated. Florida. 176 pp.
この書籍のp. 102に内肛動物の記述があり、2種のウミウシ(Trapania veloxT. goslineri)が内肛動物を食べていると推測している。この2種のウミウシがよく見つかるカイメンは、内肛動物が棲んでいることが多いカイメンなのだという。これらのウミウシは他のカイメン食のウミウシが持つrudula structureをもっていないことから、これらのウミウシはカイメンではなく、そこにいる内肛動物を食べているのではないかと推測している。
Canning, M. H., & Carlton, J. T. (2000). Predation on kamptozoans (Entoprocta). Invertebrate Biology, 119(4), 386-387.
Plagiostomum属(Plagiostomidae科)のヒラムシの仲間が群体性内肛動物 Barentsia benedeni を食べているという報告。白い小さなヒラムシ(長さ1-2mm、幅0.5mm)が繰り返しB. benedeniの個虫の萼部を咽頭で覆い噛み切ったところを観察。その後、ヒラムシの腹に透けて黄色がかった内肛動物の組織が見えたという。
著者らは、同様のヒラムシが底性の繊毛虫(Zoothamnium)を食べているところも観察しており、内肛動物だけを専食している訳ではないと考えている。
内肛動物を食べる生物についての情報は、これまでいかなる内肛動物の文献にも書かれておらず、ウミウシの文献に書かれていることがあると指摘しており、ウミウシが内肛動物を食べているという過去の情報についてもまとめている。
・McDonald & Nybakken (1978)
ウミウシ(Ancula gibbosa)が内肛動物(Barentsia ramosa)の上にいるのを観察した。実験室に持ち帰った観察により、B. ramosaを食べていることが示唆された。
・Goddard (1984)
同じくウミウシ(Ancula gibbosa)が、内肛動物(Barentsia sp.)の上にいるのを観察。捕食を直接は観察できていない。
・Picton & Morrow (1994)
ウミウシ(Ancula gibbosa)が内肛動物(Pedicellina cernua)をおそらく食べている。
・Urgorri & Besteiro (1983)
ウミウシ(Onchidoris sparsa,)が内肛動物(Barentsia gracilis)の上にいた。
ウミウシ(Janolus hyalinus)が内肛動物(Pedicellina cernua)の上にいた。
コケムシ、ヒドロ虫類、群体性ホヤ類に付いているのも観察されている。
・Picton & Morrow (1984)
ウミウシ(Trapania pallida)が、恐らくLoxocalyx属の内肛動物(のところに)いたと軽く述べている。

系統

内肛動物門が他のどの動物門と近縁であるのかという高次レベルでの系統論は、このようなマイナーな分類群においても比較的多くの人の関心を引くようで、よく話題にされる。

しかし、論文によって主張はまちまちで、決着はついていない。

Paps, J., Baguñà, J., & Riutort, M. (2009). Lophotrochozoa internal phylogeny: new insights from an up-to-date analysis of nuclear ribosomal genes. Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences, 276(1660), 1245-1254.

 

Jang, K. H., & Hwang, U. W. (2009). Complete mitochondrial genome of Bugula neritina (Bryozoa, Gymnolaemata, Cheilostomata): phylogenetic position of Bryozoa and phylogeny of lophophorates within the Lophotrochozoa. Bmc Genomics, 10(1), 167.

 

Podsiadlowski, L., Braband, A., Struck, T. H., von Döhren, J., & Bartolomaeus, T. (2009). Phylogeny and mitochondrial gene order variation in Lophotrochozoa in the light of new mitogenomic data from Nemertea. BMC genomics, 10(1), 364.
Hausdorf, B., Helmkampf, M., Nesnidal, M. P., & Bruchhaus, I. (2010). Phylogenetic relationships within the lophophorate lineages (Ectoprocta, Brachiopoda and Phoronida). Molecular Phylogenetics and Evolution, 55(3), 1121-1127.